社会保険料の算定方法

社会保険料支払いの仕組みはちょっと複雑

ここでいうところの社会保険料とは、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料のことを指しいきます。(雇用保険料はここでは扱いません)これらは、賃金総額と比例して増減するという単純な仕組みにはなっていません。以下で社会保険料はどのように計算されるのかをご紹介致します。

標準報酬月額決定の仕組み

社会保険料は、標準報酬月額というものが算定基礎となり、これに保険料率を乗じて算定をします。この標準報酬月額は1年に1回、定時決定という形で決めていきます。給与額が大きく変動するような場合には、随時改定といった途中で標準報酬月額を変更させる場合もありますが、そうした変動がないときには、原則として1年間は定時決定で決められた標準報酬月額は変わりません。これは、毎回の給与支払いごとに保険料を変動させるようなことをせずに事務効率を高めるための仕組みです。
定時決定は、毎年、4月、5月、6月の3ヶ月間に支給される報酬月額(基準給のほか、時間外手当、家族手当、通勤手当、休業手当などを含めた賃金額)の平均額を計算して、これを標準報酬月額・保険料額表に当てはめて行われます。例えば、報酬月額が275,000円だったとすると、報酬月額270,000円以上~290,000円未満に該当しますので、標準報酬月額は280,000円ということになります。この280,000円に健康保険料率、介護保険料率、厚生年金保険料率をそれぞれ掛けて、各保険料額が算定されるわけです。
ここで気づかれたと思うのが、同じ標準報酬月額でも報酬月額に一定範囲があるということです。例えば、報酬月額が270,000円であっても、289,900円であっても、標準報酬月額は同じ280,000円なので、結果としての社会保険料も同一となります。ところが報酬月額がたった100円上がって290,000円となると標準報酬月額は300,000万円となり20,000円もアップしてしまいます。
ということなので、報酬月額の範囲の中でできるだけ右寄りに設定すると社会保険料は少なめになります。普通、給与額はきりのよい万単位で設定することが多いと思われますが、これをあえて100円~200円下げて端数設定をすると標準報酬月額はひとつ下の等級になります。

標準賞与額決定の仕組み

賞与は、原則として報酬月額にはカウントされません。ただし、賞与についても、社会保険料は徴収されます。どのように徴収するかというと、別途、標準賞与額というものを決定して、これをベースに保険料率を掛けて保険料額を決定します。標準賞与額は、支給された賞与額から1000円未満を切り捨てた額です。例えば、賞与支給額が415,650円だとしますと、標準賞与額は415,000円となります。この標準賞与額には、上限が設けられています。この上限額は、健康保険の場合には1年間の総支給額が540万円(毎年4月1日から3月31日までの累計額)まで、厚生年金保険の場合には1ヶ月間の支払額150万円までとなっています。
例えば、月例賃金が50万円、賞与は年1回で150万円を支給していたとすると標準報酬月額は50万円、標準賞与額は150万円となります。ここで、月例賃金額と賞与額の配分バランスを変えて、月例賃金を45万円、賞与額を210万円にしたとします。こうすることで、厚生年金保険料に関する標準賞与額は150万円のままにしながら標準報酬月額は44万円に大きく下がります。

健康保険組合に加入すると料率がお得な場合も

中小企業の多くは「協会けんぽ」に加入していることと思います。これに対して、健康保険組合は、その構成員は大企業が中心ではありますが、中小企業でも同業同士が集まって設立することはできますので、健康保険組合に加入する道はあります。健康保険組合は、保険料率を一定の範囲で独自設定しているので、多くの場合、協会けんぽより低い料率設定となっています。したがって、現在協会けんぽに加入している会社が、健康保険組合に鞍替えすれば社会保険料が下がる可能性が高まります。
また、付加給付など各組合独自のサービスもあるので、加入するメリットは小さくありません。